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小さな冒険

わたしは、「旅行」がけっこう嫌いです。

中学生くらいから、家族旅行も1人だけ家で待ってたし、
女の子て結構みんな旅行が好きで、よく誘われましたが、断り続けていたら誰からも誘われなくなりました。

皆で出かけて、観光地を見て回っておいしいもの食べて・・・
みたいな行為があまり好きじゃないので。(ひねくれ者)

そんなわたしの、珍しい旅行記を、なんとなく思い出して引っ張り出してみました。
昔のブログから再掲載。人の名前など一部伏せ字にしました。
長いので、お暇な方のみどぞ。

今から4年前くらいかな?の冬のお話。


**

はじめての一人旅。金沢へ向かう。
目的は、1月16日、17日に金沢21世紀美術館で行われる美術館における教育普及系のシンポジウムに主査の先生が出るので。
〇〇先生の「まだ行ってないのなら来たらいいわよ」という軽めの一言で決定。
先生にとっての金沢は、私にとっての横浜、くらいの距離感なのだろう。

1月15日の朝、観光に当てる時間を確保するためにシンポジウム前日に出発。
8時半頃小手指発、9時54分の新幹線に乗り、13時半ごろ金沢に着く予定。
西武線が機械のトラブルだかで5分程遅れるが、武蔵野線に乗れれば新幹線には間に合うので、乗り換えの秋津→新秋津間を全力で走る。
靴ひもがほどけたが走った。
間に合った!と思うと、新秋津のホームに人があふれている。
まさかっ!!
……武蔵野線も事故で遅れていた。
(中略)
予定より20分ほど遅れて大宮着。
予定の次の新幹線には乗れそうだ。

特急券売り場にて、金沢までのチケットを買う。
どうも混んでいるらしく、新幹線の指定席はラストだった。
越後湯沢から金沢間を走る「ほくほく線」の「特急はくたか」の指定席は満席。
途中の直江津という駅から指定席が空くというので、それ以降の指定席をとってもらった。
これで、3時間中の2時間は座れるわけだ。良かった。
それにしても、この時期に北陸に向かう人がそんなにいるとは、かなり驚きだ。お姉ちゃんには「酔狂だね」と言われたのに。

大宮~越後湯沢の間は、三人席の真ん中だったため身動きが取れず。窓側の人がカーテンを閉めてしまったため退屈した。
iPodで音楽を聞いていたと思うけど、何を聞いていたか全く覚えていない。

(本当の退屈はこれからだった。)

越後湯沢に着くと、一面の雪世界にテンションがあがった。
1人なので上がったテンションのやり場がなく、〇〇ちゃんに電話してみる。
が、出ない。残念。

乗り換え時間があまりなかったので、はくたかに急ぐ。

ずいぶん混んでいる。
自由席は満席。
みんなすでに立っている。

直江津からとった指定席が2号車だったので、2号車と3号車の間の通路に陣取ることにした。
そこに陣取っていたのは、サラリーマン風のおじさんが5人程。2人と、2人は、仲間らしいが、少し会話をかわす程度。もう一人は、一人で来ているみたいだ。

窓の外の景色が真っ白で珍しいので、ずっと見ていた。
雪ってこんなに綺麗なのかーと思う。
本当に白い。
とても田舎を走っているみたいで、ときおり、雪に半分くらい埋まった民家が見える。
(住んでいる人は大変だろう)
こんなに真っ白でなにもないと、なんだかわずらわしいものから解放されたような気持ちになる。

十日町を過ぎたあたりからトンネルが多くなり、車窓が見れないので本を読むことにする。
持ってきた小説は、いしいしんじの「ぶらんこ乗り」(何度も読んだ)と、村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」(旅行のために買った)

なんとなく「ぶらんこ乗り」を読みはじめる。
何度も読んだ冒頭。
毎回ここでなぜか泣ける。

読み始めて間もなく、電車が止まった。

大雪のため停車…。

今日は雪が降るといっていたし、予想はしていた。

そのとき、12時40分。電車はすでにちょっと遅れていたようだ。

直江津の到着が12時半の予定だったから、もうちょっとで座れるところだったのにな…仕方ない。と思う。

暇になったので、返してなかった同窓会系のメールをまとめて返信。
ビオラ会の幹事なので、みんなに連絡もしてしまおう。

まだ動かないのかなぁ?
止まってからもう1時間経つ…。
これはニュースに出るかもしれないなと思う。

通路に出てきて、携帯で電話を入れはじめる人がたくさん出てきた。
「電車がちょっとおくれていますので、はい…ちょっと今日は…はい」

車内アナウンスでは、次の駅に雪が積もっていて、除雪作業を行っているという。

雪国育ちっぽいおじさんたちが
「こりゃぁ1時間や2時間で動きそうにないぞ」
と言った。

そのときは、まさか~・・・と思った。

14時30分、停車してから2時間。
ずっと通路にいるので、足がきつくなってきた。
バックにHANJIROのおおきめのビニール袋が入っていたので
それを下にひいて座る。

ちょっと、意識がクラクラして気持ちが悪くなった、気がした。
私は閉所恐怖症の気があって、映画館などは嫌いなのだった。
暗くて人が多くなければ、大抵平気なのだけど。
でも、ここで気持ちが悪くなっても本当にどうしようもない。
気持ちを落ち着かせよう、と思う。
甘いべっこう飴を持っていたのでなめる。
しゃがんで目を閉じて落ち着かせる。

深呼吸。

うん、大丈夫そう。

本を読むほどの想像力を使う元気がなかったので、ポケモンをやる。
エスパー系のジムリーダーナツメがどうしても倒せない。
むしに弱いはずなので、ストライクを育てることにした。
レベルが35くらいまで上がったのでもう一度戦いを挑んだ。
最初のエーフィに一撃でやられた。

やる気がなくなった。

まだ動かない。

お昼過ぎには金沢に着くはずだったので、だんだんと乗客もイライラしてくる。
運が悪いことに、車内販売をしていない電車だったため
飲み物も食べ物もない。

私は幸い、駅でチョコレートと菓子パン(ホットケーキ風の2枚入り)を買っていた。べっこう飴もたくさんもっていた。
ホットケーキのうち一つを食べた。
いちごでおいしかった。
もしこのまま、極限状態が続いたら、私のチョコレートをめぐって争いになったりしたらどうしよう、と妄想した。

17時。

除雪作業には、まだ相当な時間がかかるとのアナウンス。
越後湯沢まで帰る電車を出しますので、越後湯沢に帰る方はそれに乗って帰ってください、とのこと。

しびれをきらした多くの人が、移動していく。

さっき怒っていたおじさん、会社の会議を欠席すると電話していたサラリーマンの人。などなど、ぞろぞろ…。

どうしよう…!!?

私は、今なら諦めて越後湯沢まで行ければ、家に帰れる。
家のあたたかい部屋が浮かび、帰りたくなる。

その間も、私の横を、諦めて帰る人たちが通る。
座席のある車両を覗いたが、相当な人が座れずに立っていたので、それでも席は空かないみたい。

どうしよう。

判断ができず、家に電話してみる。

お母さんが出た。

状況を説明する。
「でも越後湯沢まで帰って、越後湯沢に泊まるとしても予約とかしてないし。いざとなったらJRがなんとかするでしょう。」
ということで待つことにする。
「いざとなったら私のチョコを1万円で売りなさい」
と冗談を言って笑った。

さぁ。待つ覚悟はできた。

とにかく、通路は寒いし疲れたので空いた席を探そうと思う。


ずっと通路にいたので、なんだか入ってはいけないような気がして
恐る恐る、車両に入る。

席が空いているように見えたので
「ここの方は帰られました?」
と、窓側のおばさんに聞いたら、
「いえ、まだいますけど」
と、「なにこの子、図々しい」とでもいうように、すごく冷たく言われた。

泣きそうだ。

これ以上、声をかける勇気をなくしてしまい、また通路に引き下がる。

しばらくすると、女性がやってきて、
「席、ひとつ空いたみたいよ」
と、声をかけてくれた。

優しさに、また涙ぐむ。
泣いては恥ずかしいので、目を細めて、「ありがとうございます」とお礼を言って座る。

やっと温かい席に座ることができた。
その女性たちのグループの人が、おまんじゅうをくれた。

越後湯沢まで帰る電車は、30分に一本くらい来て、そのたびに
「旅行を中止されて帰るお客様は、お乗りください」
という。
本音は、もう帰ってほしいのだろうなと思う。

座ると、客席では、色々な情報が行き来していた。
どうも、バスを手配しているらしい。
私は、バスは酔いやすい体質だから、バスで金沢まで行くとかになったら嫌だなと思う。

席に座り、とりあえず待つしかないので、18日提出のレポートにとりかかることにする。どこから持ってきたのか、乗務員からお茶が配られた。
現代都市論の課題で、地方都市における中心市街地の疲弊について、だそうだ。

20時ごろ。バスが着た。
しかし、乗れるのは次の直江津までの乗車予定の人だけらしい。
直江津までの予定だった人は、たったあと少しだったのに7時間も乗っていたんだなと思う。
そこでも何人かの人が降りていった。

21時、レポートが終わった。
止まっている駅は、クビキという駅で、1号車から車外に出れるそうなので
気晴らしのために車外に出てみた。

静かな、雪の夜だった。

世界が止まってしまったみたいに静かで、電車が息をこらしているみたいだった。
寒いけど気持ちがよかった。
ひんやりとした雪を手にもち、投げたり、雪の塊を蹴飛ばしたりした。


そして寒くなったので車内に帰った。

携帯の電池があと2本で心もとなかったのだけど、〇〇ちゃんに電話した。
〇〇ちゃんの声を聞いて、なんだかそれは日常的ないつもの〇〇ちゃんで,私もいつもの私だった。
なんの話しをしただろう。暇だから雪だるま作りたいとか言ったかもしれない。

レポートも終わったので、持ってきたもう一冊の「神の子どもたちはみな踊る」を読み始めた。(「ぶらんこ乗り」は、なんか心の余裕があるときでないと楽しめないということがわかった)

22時。ランチパック(富士宮焼きそば味)と紅茶花伝のミルクティーが配給された。もうこのまま、車内泊だろうという空気がただよった。
私のそばに座っていた、席が空いたことを教えてくれた女性の4人組なんかは、歯を磨きだしたり、メイクを落としだしたりした。
水も止まっていたが、お茶で口をゆすぎ、メイク落としシートをみんなで回して使っていた。
女性特有の、図太さを感じてしまった。


私は、読み始めた小説が思いのほかすごく面白くて、しばし夢中になる。

主人公は奥さんと別れ、よくわからない用事をたのまれ飛行機で北海道に行くのだが、こんな言葉が出てきた。

「でもここでこうしていても、遠くに来たような気があまりしないな。変なものだね」
「飛行機のせいよ。スピードが速すぎるから」とシマオさんは言った。

「身体は移動してても、それにあわせて意識がついてこられないの」


なるほど。
私はなんだか、金沢に行くのに、意識をついてこさせるためにここで何時間も停車しているような気がした。

0時近くになると、車内が少し消灯された。

私も疲れたので、寝ようと思う。

座席の隣は空いていたので、体裁はもう気にせず、そこに丸くなって寝た。
コートをかけて、マフラーを枕に。
人が通るたびに、自動ドアの音がうるさいので、iPodを聞いた。
矢野顕子の「Piano Nightry」を聞くけれど、暖かい日々が思い出されて心細さにどうにも涙が出てしまう。

これはいけない。

Bill Evansの「Sunday at the villagevangard」に切り替える。
久々に聞くエバンスはやはり素晴らしかった。
ラファロとの完璧なコンビネーションは、この状況で聞いてもほうーと思った。
Allice in wonderlandが特に好きだ。
とか思っているうちに、少し眠れたみたいだ。

30分程寝たみたいで、起きると1時過ぎだった。

すると、電車が動くというアナウンスが入った。

しばらくして、そろそろと電車が動きだし、やがて加速していく。

すごい、動いた!

やけに感動した。
ここぞとばかりに、矢野顕子の「Night train home」を聞いた。
「小窓の外、終わる世界に雪が降っている
 寝台車のベッドに横たわる絶望と 希望」
なんてピッタリなシチュエーション!!嬉しくなってにやけた。


深夜1時半。

静かな、雪の降る深夜に。
スピードを上げていく私たちの電車。

この世で動いているのはこの電車だけなんじゃないかっていう気がして
なんだかわくわくしてきた。

窓の外に、大きな工場が見えた。
キラキラしていた。
大きくて、キラキラしていて、どこか異世界の摩天楼みたいだった。

電車も調子良く動き、少しうとうとした。

目が覚めるともう眠くはなかったので、小説の続きを読んだ。

深夜に行った焚き火を前にして、主人公たちが、自分の過去のなにか、おいてきたものや、現在の自分とか、弱いところとか、死ぬときのこととか、そういう、ふだん心の奥に閉じ込めてあるようなものが、少し、大きくなって、外に出る、そんな話し。
たき火を想像した。
私の中での焚き火のイメージも、おなじく深夜である。
毎年、除夜の鐘をつく神社でおこなわれている、あたたかいたき火。

「心配するな。焚き火が消えたら、寒くなっていやでも目は覚める」

この言葉の意味を考えながら。
2回読み返した。

死なないといいなと思った。


この話がすっかり気に入った。

午前4時半を回る。

「次は金沢」
というアナウンス…。

ついに金沢に着くのだ!!





日記はここまででした。

その後、冬の金沢をふらふらと満喫して帰りましたとさ。






コメント

[C252]

最初は、「ねこかもめさんの旅行記なんて、すごく新鮮で面白い!!」と思って読んでいたのですが、
途中から何故か不思議と、ひとつの文学小説を読んでいるような気分になりました。

文章があまりにきれいで心地よすぎて、
普通の人が書くような下手がゆえのリアリティーがないというか(笑)。

文才もあるんですね!
本当にビックリしました!!

あまりに上手くてフィクションのように感じられて、
「それは、大変な冒険になりましたね」とか、普通のコメントができないです(笑)
  • 2013-12-11 18:17
  • ハイハイ ↑ フライ
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[C253] Re: タイトルなし

ハイハイ↑フライさん

あんまり面白くない内容ですみません…(^^;;
旅行記てか、たどり着いてもいないし、車中記でした。

自分でも、この時のことが、もはやフィクションのような気がしますが、ノンフィクションです。笑
自分で読み返しても、たしかにリアリティないですね。

ちょっと電車が止まっただけなのに、
「普通」のことが失われたからかな、いろんな感覚が鋭くなって。

結果的に、なんか良い時間を過ごしたなぁ…という感じです。

わたしの中で唯一の、旅行での印象深い思い出でした。
長いのに読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m


  • 2013-12-11 19:01
  • ねこかもめ
  • URL
  • 編集

[C254] ヽ(´_`)ノ

ホラ、ね。ハイハイさんも言うよーにぃ、
何げにサラリと、文体がイイって評価になる
っしょ(´∀`)ネ

あと、「旅嫌い」なんも、共感持てるなぁ(´_`)
ひろぴー、よそへは「暮らしに」行くのは好き
やけどぉ、訪れる・・のは苦手ぇ〜ヽ(;´Д`)ノ
  • 2013-12-11 23:56
  • ひろぴー
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[C255] Re: ヽ(´_`)ノ

ひろぴーさん

お二人に言われるとちょっと嬉しいですね◎
でも、言葉選びは、けっこうこだわってる、かもです。
この感じを表すのに適切な言葉は、どれだろうって。
語彙が多いわけではないので、雰囲気でごまかしちゃえ!てのはありますが…(^^;;

そうそう、住むならいいのですが。
なんとなく、同じ感じだと思います。

あ、でもハイハイ↑フライさんのしてるような「バイクの旅」みたいのは、すごく憧れます。
受験終わったらやろうかな。ってぐらい。免許ないけど。笑

  • 2013-12-12 02:47
  • ねこかもめ
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